Canon PowerShot S110
さる5/11、
シブラクに行って来ました。この日のトリを務めるのはなんと二ツ目の松之丞さん。
松之丞さんのブログ記事からもこの回に賭ける意気込みがどえらく伝わってきたので、これは見逃せないと仕事終わりに円山町のユーロスペースへ向かいました。
前回行った時は割と空席もあってゆったりと観れたので、今日もまあそんな感じだろう、と思いつつ開演10分ほど前に着いたのですが、何と席はあらかた埋まっている状態。どうにか真ん中やや後方の席が取れましたが、後から入ってきた人たちは完全に席からあぶれていました。段差のある会場なので通路にお客さんを座らせていましたが、それでも足りず最後列に大勢立ち見の人も居ました。
今日は凄いなあ、と思っていたら会場の照明が落ちトップバッターの立川談奈さんが登場。観るのは初めてです。時間が読めないと手探りしつつ快楽亭ブラック師匠の話などのマクラで笑いを取っていましたが、いつまでたっても落語が始まらない。どうやら時計が見えないだか何だかで本当に時間がチェック出来ていなかった模様。マクラだけで下がろうかと躊躇している様子でしたが、客席からの声に押されて『勘定板』へ。初めて聞く噺だったのですがこんなド直球な下ネタの落語もあるんですね!でもそんな眉をひそめるほどお下劣に感じないのはやはり演じる人の力量なんでしょうか。私は未だにウンコチンコではしゃぐガキなので大満足でした。
続いて橘家文左衛門師匠。観るのは二回目です。高座に上がって第一声の「だいぶ押してます……」でまずウケを取っていました。静かなマクラから『時そば』へ。喬太郎師匠のDVDで見たことありますが、生で演じられるのに接するのは初めてです。面白かった!最初の客が蕎麦を食べるくだり、底の方に残った短い蕎麦のかけらをかきこむ仕草がツボでした。二番目の客が釣り銭をごまかすトリックに気付くくだりを執拗に描写するところも印象に残りました。
ここでシブラクならではの「頭を休めるためのインターバル」なる3分間の休憩を挟まれました。前回来た時も思いましたが、トイレ無しで2時間超過ごすのは何かと心配なので10分ぐらい休憩させてほしいです。
休憩が終わり春風亭一之輔師匠が登場!
先日鈴本演芸場で『鰻の幇間』を観て目茶苦茶感動して、また観たいなあと思っていたのですが、「昔は色々な仕事がありまして……」というマクラを聞いて「まさか!」と思ったら始まったのは『鰻の幇間』!キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!鈴本演芸場で観た時はそこまでの寄席の流れに乗った熱演でしたが、この日のようにほぼそれ単体で独立した形で聞くのもこれはこれで素晴らしかったです。薬味の伏線が回収される最終盤の展開がたまらない。羽織を脱がないままの熱演を堪能しました。
そしてついにこの日の主役の松之丞さんが登場!「大事なこの日の一発目にいきなりウンコの話ですよ。やっぱりこういうところが立川流ですね」というマクラで爆笑。そして演目は新作講談『グレーゾーン』!松之丞さんには『グレーゾーン』という凄い新作があるというのは聞いていましたが、これまで巡りあうことは叶わず。収録されているDVDは購入したものの、最初はライブで……と我慢をしていたのですが、ついに観ることが出来ました!2001年に出版され、世間のプロレスに対する幻想を打ち砕いた衝撃の書籍、
流血の魔術 最強の演技
。この本に青春を狂わされた一人のプロレスファンの少年が、口先三寸でガチンコで生きて行くことを目指して落語家への道を歩む。そして30年後、気鋭の落語家へと成長したかつての少年は待ち望んだ大舞台へ登る機会を得るが……というストーリー。梶原一騎ファン、相撲ファンとしてはたまらないお話でした。序盤から笑いに笑わされ、終盤にはガチか、幻想か、というシリアスな問いに考えこまさせられる。ラストの電話のくだりに思わず息を飲みました。終演し、松之丞さんが退場した後にはこの講談の根幹に関わる「ある映像」が流されるという趣向も。期待に違わぬ、素晴らしいものを見せてもらいました。
一之輔師匠の『鰻の幇間』、松之丞さんの『グレーゾーン』、観たいと思っていたものをドンピシャでたっぷりと楽しめた。素晴らしい一夜でした。帰り道、余韻に浸りつつも小腹がすいたので
神南カリーのカレーパンを買い食いしたのですが、途中で談奈さんの『勘定板』が脳内にフラッシュバックして一瞬固まりました。文左衛門師匠の『時そば』にちなんで富士そばにでも行った方が良かったか……