2009年6月18日木曜日

『チェイサー』

観てきた@銀座シネパトス

何か凄いトコにある映画館でした。銀座は銀座だけど・・・4車線の道路の下を潜ってる地下道があって、そこが横町みたいになってるんですね。そこにある映画館。当然ながらド狭くて、しかも客席の傾斜が全く無い構造だったんでちょっと首が痛くなったり。『ヘルボーイⅡ』を観たミラノ座の隠し面みたいなトコも衝撃でしたがココも中々のモンでしたよ。雰囲気は良かったですけど。

で、『チェイサー』。韓国映画です。原題は『追撃者』。コレはヤバいですねえ、想像以上にビンビン来ましたよ、僕は大好きですこの映画。どんな話かっちゅうと、まず主人公がいるんですがコイツがあまり上等な人間じゃ無いんですね、刑事だったのがドロップアウトしてポン引きやってセコく稼いでるっていう。で、ある日雇ってるデリヘル嬢が居なくなっちゃうんですね。そこでコレはどうも誰かがウチの女をとっ捕まえて他に売り飛ばしてるんじゃねえかと独自に捜査をするんです。そしてここでもう一人の主人公が登場するんです。写真の人。コレがもう真性のドキチガイでして、呼んだデリヘル嬢を次々と自分が住んでる豪邸に連れ込んではとんでもない方法(観てのお楽しみ)で殺害して庭に埋めとるっちゅう大変なシリアル・キラーなんです。で、この二人のドラマが随所で交錯しつつ、お話は救いの兆しをチラチラと覗かせながら嫌な方へ嫌な方へとどんどん突っ走って行くんですね。二転三転、まだ終わらない、まだ続く、そろそろいいでしょもう堪忍してみたいな。

重苦しい事この上ない映画なんですが、脚本・演出共にクオリティは抜群です。監督のナ・ホンジンはコレが長篇デビュー作という事で初っ端から随分とエラい仕事をしたもんだと感心しちゃいます。どんだけ才気溢れるご尊顔なのかしらと思って写真みたら朴訥とした兄ちゃんで意外でしたが。見た目の凄惨さ以上に精神に来るダメージがデカい残酷シーンとか、NG殆ど出さずに撮ったとか、遠景の使い方とか、ちょっとイーストウッドっぽいかなと思ったり。あの方よりはだいぶ緻密ですが。あとは何といってもキチガイ役の俳優さんの演技ですね。ハ・ジョンウって人なんですが、憑依タイプの怪演・名演で結構なインパクトを残してくれます。去年仲間内で『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ=ルイスと『ノーカントリー』のハビエル・バルデムと『ダークナイト』のヒース・レジャーを一纏めにして、「もしこの三人が一緒に飲んでたら」みたいな感じのシチュエーションネタを作って遊んでたんですが、この『チェイサー』のハ・ジョンウの演技もこの系統に入る感じですね。あのトロンとした目付きはまさに人殺しの眼ですよ。あんまり強烈なんでこれから先こんな役ばかり回されてしまいそうでいささか心配になりますが、ちょっと気に掛けておきたい俳優さんです。

カンヌでも大評判になって刑事プリオがハリウッドリメーク権を買ったとかで、そっちの展開も気になりますね。しかしこの映画、韓国ではR15指定なのに500万人動員の大ヒットだったそうですが、それはそれでちょっとビョーキでねえかと思ったり。でもこの映画を母国語で楽しめるってのは素直に羨ましいなあ。

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