2015年7月20日月曜日

朝練講談会(松之丞・春陽)〜神田連雀亭きゃたぴら寄席

三連休の最終日。早起きをしてお江戸日本橋亭へ。松之丞さん、春陽さんの朝練講談会に行って来ました。この三連休は怪談特集だったそうです。

神田松之丞『真景累ヶ淵 宗悦殺し』
神田春陽『小夜衣草紙』

お江戸日本橋に行くのは今日が初めてでした。朝9時半からの会ですが場内はほぼ満員。松之丞さんが登場すると場内の明かりが絞られてぐっと怪談らしい雰因気に。今日はこのあと浅草演芸ホールで松鯉先生の怪談噺の時に幽太(場内が暗転した後にお客さんを驚かす役)をやるとの事。末廣亭で松鯉先生が幽太役の前座さんを紹介するのを見て「ああ、昔は松之丞さんもアレをやってたのかな」と勝手に思っていたのですが、今日が幽太デビューになるのだそう。見に行きたかったなあ。まずはマクラでわっと笑いを取り(内容はちょっと際どいので書きません)、「真景」の意味と三遊亭円朝が新作を数多く手掛ける事となった経緯を説明した後、『宗悦殺し』へ。『真景〜』は岩波文庫で文章としては読んだことはあるのですが、実際に口演されるのを観るのは落語・講談を問わずこの日が初めてでした。宗悦は一方的な被害者という印象が強いですが、松之丞さんの演出する宗悦が深見新左衛門を責めるシーンのねちっこい事いやらしい事!気の毒っちゃあ気の毒だけどこれは切り捨てられるのも無理はない……という感じ。その宗悦が恨みを晴らすクライマックスはまさに息も詰まるような緊迫感。陰惨の一言に尽きる、まさに怪談らしい怪談を堪能しました。

続いては春陽さん。初めて高座を拝見しました。会場の照明は落とさず明るいまま。脱力系というか、シュールというか、独特の雰囲気を漂わせる講釈師さん。マクラから場内を笑いで沸かせていましたが、それは本編に入っても変わらず。商家の若旦那と良い仲になる花魁。しかし若旦那の愛情は徐々に冷め、代わって熱を上げた武家の娘とすんなり縁談がまとまる。商家の番頭二人が花魁のもとへ手切れの談判に赴くが、悔しさの余りに花魁は自害してしまう。そして迎えた若旦那の婚礼の日、商家には次々と怪異が……といういかにも怪談!というストーリーですが、花魁の怨念が起こす怪異に振り回される番頭二人のドタバタが随所に盛り込まれた楽しい一席でした。笑いの絶えない場内は松之丞さんとは好対象。でも若旦那夫婦に花魁の怨霊が迫るシーンはゾクッとしました。楽しかった!

会場を出る時に年末の大成金のチケットをゲットし、半蔵門線で神保町へ移動。ボンディでカレーを食って、少し時間を潰した後、神田連雀亭へ移動しました。今日はオール女流講談の三席。

宝井琴柑『加藤孫六 出世馬喰』
一龍斎貞寿『沢村淀五郎』
田辺一乃『江島屋怪談』

13:00〜14:30と事前のタイムテーブルにはありましたが、終わってみたら15:00近く。時計を見ていないので定かではありませんが、おそらく皆さん30分以上やっていたんじゃないでしょうか。三者とも大熱演、会場もほぼ満員で、素晴らしい盛り上がりでした。一乃さんは「一人で練習をしていると怖いんです。皆さん本当に怪談ってお好きですか?」とマクラで笑いを取ってから、場内の照明を落として『江島屋怪談』!まさか一日で三席も怪談を見られるとは。貞寿さんの『沢村淀五郎』は大役に抜擢された若い歌舞伎役者のお話。前半は仕事で失敗をして「わかんない事があったら質問しろ」と怒られた後に質問をしに行ったら「どうしてこれがわかんない訳?自分で考えて」とまた怒られているような、ちょっと胃が痛くなるようなお話。淀五郎が受けたのが愛の有る叱咤で本当に良かった……

そして一番印象に残ったのは琴柑さんでした。若き日の加藤嘉明が天涯孤独の身から腕の良い馬喰へと出世し、やがて叔父と再開し秀吉への仕官する切っ掛けを掴むまでのお話。高座で汗の迸る講釈師というと松之丞さんが思い浮かびますが、琴柑さんも負けず劣らずの物凄い汗の量。主人公の孫六が叔父に対して自分こそは父の忘れ形見であると名乗り出る感動の場面では、目元の汗のしずくがライトに光って本当に涙が流れているように見えました。今まで寄席に行っても自分の感受性の未熟さから「笑う」という事に主眼が置かれてしまっていて、いわゆる人情噺ってピンと来ることが少なかったのですが、今日琴柑さんが読んだ『加藤孫六 出世馬喰』は胸にジーンと来る一席でした。良いなあ、こういうの良いなあ。

講談尽くしの一日でした。新しく気になる講釈師さんも沢山知れて収穫多し。落語を新しい趣味にしようとして始めた寄席通いですが、何だか講談の方が観に行く機会が多くなってきたような……

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